ト書き

からふるべりぃ学園。
放課後の放送室。

美緒

(机たたく)
諸君等に集まってもらったのは他でもありません。
明日に控えた文化祭当日に向け、我々放送部がどんな出し物をするべきか。
大いに語り合いましょう

このみ

放送部だったの？

沙紀

それ、前日に話し合う事…？

麻日

みぃさま

美緒

その名は捨てたわ。「軍曹」と呼んで

麻日

軍曹…

美緒

でありますッ！

麻日

そもそも私たち放送部員じゃないんだけど…、ねぇ？

このみ

うん

ネコ

ニャー

沙紀

鬼軍曹、帰っていい…？

美緒

何言ってるの二等兵どもッ

ト書き

美緒、ライフル構える。

麻日

銃口下げて

美緒

ここは戦場よ！

麻日

平和な放送室だよ

美緒

我々は、固い絆で結ばれた友達。
でしょ？

麻日

それは…

美緒

一緒になって悩み苦しみ、血と汗と涙と血を流すのッ

麻日

血が多いよ

このみ

あっさ、そろそろクラスの方に戻らないと…

ネコ

ニャー

麻日

そうだった

美緒

クラス？

このみ

文化祭の準備

麻日

飾り付け途中だもんね

このみ

コスプレ喫茶やるのー

麻日

餃子も作るんだよ

こ＆麻

ねぇー？

ネコ

ニャー

沙紀

私も、準備…

麻日

で。極めつけが、さきちんのコスプレ

このみ

なになにー？

沙紀

…血だらけのゾンビ

このみ

ィーヤアアアアアッ！

ネコ

ニャァーッ！

麻日

このみん…だ、抱きしめ過ぎ、折れる…

このみ

ゾンビーッ！

ネコ

ニャーッ！

麻日

私が、ゾンビにな、ぅ…

沙紀

それじゃ…

美緒

待ちなさいよッ！！

ト書き

緊張が走る。

美緒

皆…手伝ってくれないの？

このみ

みぃさま…

ネコ

ニャー…

美緒

あと、そのネコ何ッ！？

ネコ

ニャッ！

美緒

さりげなく輪に溶け込んで、いいともレギュラーの座を狙ってる訳？ぇえ？

このみ

違うよ。この子は、メカネコたーん☆

ネコ

ニャー☆

美緒

メカネコ…？

麻日

さきちんが作ったんだって

沙紀

MADE IN 沙紀

美緒

そんなの…、ただのネコじゃない？

沙紀

ただの猫ではない。
人工知能を搭載し、両目は監視カメラを内蔵、さらに耳は録音機能を実装済み

美緒

やる、わね…

沙紀

当然…

このみ

みぃさまも抱っこする？

ネコ

ニャー

美緒

結構よ

このみ

かわいいよー

美緒

わ、私の方が可愛いわよ！

麻日

張り合っちゃ負け

美緒

もういいッ！
帰って。私独りで考えるから

麻日

そう目くじら立てないで

美緒

にこにこぷん

このみ

ごめんなさぃ…

ト書き

沙紀、席を立つ。

沙紀

お先に…

麻日

ちょ、さきちんってば！

ト書き

沙紀、退室。

麻日

…ホントごめんね。
行こ、このみん

このみ

ぅん…

美緒

……

このみ

ネコたん、置いてくね

ネコ

ニャー

ト書き

麻日、このみ、退室。

美緒

…(溜息)

ト書き

タイトルコール。

皆

からふるべりぃ ラジオドラマ 『Question』

ト書き

夜の教室。

麻日

ふぅー、飾り付け完了ッ。
間に合ってよかったね？

このみ

うん。お疲れさまー

麻日

けど…

ト書き

無音。

麻日

学園に残ってるのッて私等ぐらい？

このみ

静か、だね？

麻日

だね

このみ

あれ？さきちんは？

麻日

トイレで衣装合わせてくるッて

このみ

怖くないのかな…

麻日

平気よ。ゾンビだもん

このみ

バイオハザードーッ！

麻日

このみん、首…首絞ま、ぅ…

このみ

わっ、ごめんあっさ…！

麻日

(咳)

このみ

大丈夫？

麻日

ちょっと、水、飲んでくる…(咳)

このみ

お大事にー

ト書き

麻日、退室。

このみ

ぽつん…。
〈気づけば、あたしは夜の教室にひとりぼっち。
どこかオバケでも出そうな、なにか事件でも起きそうな、そんな感じ。
そして、それは本当に…〉

ト書き

スピーカーより、「ピンポンパンポーン」。

このみ

キャッ！
なにぃ、放送…？

美緒

諸君、司令部より報告があります。
夢丘麻日、間壁このみ、花村沙紀、以上の三名は直ちに通信室まで来るように

ト書き

「ピンポンパンポーン」。

このみ

みぃさま、まだいたんだ…。
〈それから5分待っても、あっさは戻ってきません。
あたしは月明かりを頼りに、薄暗い廊下を抜けて、放送室へとやって来ました〉

ト書き

放送室前。

このみ

あっさ…？

麻日

このみん

このみ

放送聴いて？

麻日

そうなんだけど、入れないみたい

ト書き

このみ、ドアノブ回す。

このみ

ホントだ。鍵掛かってる

麻日

ねっ？

このみ

みぃさまーっ

ト書き

ノック。返事はない。

沙紀

どうしたの…？

麻日

ああ、さきち…

麻＆こ

ンギャァァアアアアッ！

このみ

ゾンビキタ━━━━(゜∀゜)━━━━ッ！

沙紀

私。
驚いた…？

麻日

もう衣装のまま登場しないでッ

このみ

仮装大賞じゃないんだよっ

沙紀

それで…？

麻日

あぁ…、鍵閉まってて開かずの間

沙紀

そぅ…

このみ

みぃさまっ、8時だよ全員集合ー

沙紀

どいて。鍵開けるから…

麻日

ピッキング？

沙紀

そぅ。簡単…

ト書き

鍵開く。

沙紀

はい…

麻日

器用にも程があるでしょッ！

このみ

とにかく、中入ろ

麻日

そうね。
たのもー

ト書き

ドア開く。

麻日

ッ…！

沙紀

……

このみ

キャアアアアアアアーッ！
〈変わり果てた姿に、あたしはバタンＱ寸前でした。
そこには、血だらけのみぃさまが倒れていました〉

美緒

……

麻日

みぃさま？

沙紀

返事が無い。ただの屍のようだ…

麻日

みぃさま！みぃさまッ！

沙紀

触っちゃだめ…

麻日

けどでも、みぃさまが、血がッ

沙紀

冷静に。現場は保存すべき。
無闇に動かしては、捜査へ支障が出る…

麻日

だからって…

このみ

うわーん(涙)

麻日

そうだっ

沙紀

だめ、これ以上動かしては…

麻日

お願い、確認だけ

ト書き

麻日、美緒の上着から鍵を出す。

麻日

…あった

沙紀

それは…？

麻日

放送室の鍵

沙紀

鍵は鬼軍曹が所持…？

麻日

みたいね

沙紀

即ち、密室…

麻日

うん

沙紀

そして、このダイイングメッセージ…

麻日

読むよ

美緒

拝啓。
白菊の薫り高いこの季節、文化祭の準備でさぞオッパッピーかと存じます。
さて。既にご承知の通り、私は何者かに胸をナイフで刺されました。
それはそれは両目ビョーンな、メメタァッ！な一撃でした。
嗚呼、失礼。意識がマリリンモンロー、訂正。朦朧として参りました。
末筆ながら、さようなら。
敬具。
佐伯美緒、彼氏募集中

沙紀

……

麻日

……

このみ

ツッコミを…

麻日

では僭越ながら…。
長ッ！！

このみ

ありがとうございました

沙紀

やはり、他殺…

麻日

間違いないみたいね

ト書き

静寂が包む。

このみ

〈事件を整理してみよう。
放送があった時、みぃさまは生きていた。
5分後。あたしが放送室へ向かうと、既にあっさが。遅れてさきちんも合流。
鍵を開け、3人で中に入ると、みぃさまが倒れていた。
鍵はみぃさまのポケットから見つかる。そして、ツッコミを終えて、現在〉

麻日

さきちん

沙紀

何…？

麻日

さきちんはさ、ずっとトイレに？

沙紀

疑ってる…？

このみ

あっさッ

麻日

可能性の話

沙紀

聴かせて…

このみ

さきちんまで、やめなよー

沙紀

疑いを晴らす為…

麻日

じゃ、私の推理。
事件当時、ここは密室で、鍵はみぃさまが持っていた。
つまり、犯人は鍵を閉められる人物に絞られる。
鍵もないのに施錠なんて、私とこのみんは不可能。
自ずとピッキングのスキルを持つ、さきちんが怪しくなる

沙紀

なるほど…

麻日

さらにもう一点。
犯人はみぃさま殺害時に、返り血を浴びた筈。
でも、さきちんなら問題ないよね？

このみ

あっ…！

麻日

そう、血だらけのゾンビ衣装。
これなら返り血を浴びても、怪しまれずに済む

このみ

おーっ(拍手)

麻日

よって、犯人はさきちん、貴女よ！

ト書き

沈黙。

沙紀

そぅ。
おしまい…？

麻日

えっ…まぁ、おしまいだけど

沙紀

反撃開始

麻日

どんとこいです

沙紀

確かに、犯人は鍵を閉められる人物に限定される。
けど、あっさにもそれは可能…

このみ

えっ？

麻日

私は鍵がなくちゃ施錠なんて

沙紀

そぅ。鍵を使って…

このみ

どういうこと…？

沙紀

犯行を終えたあっさは、鍵を持って放送室を出る。そして、施錠。
何食わぬ顔で放送室前に待つ

このみ

一番乗りだったもんね？

麻日

たまたまよ…

沙紀

その後、再び室内へ。
掌にあらかじめ鍵を忍ばせておき、鬼軍曹のポケットへ手を入れる。
あたかも今ポケットから鍵を見つけたように演技すれば…

このみ

おーっ(拍手)

麻日

待ってよッ。
なら、返り血はどう説明するの？
着替えにいく余裕なんて、私にはなかった

沙紀

返り血は、飛ばなかった

麻日

ありえないよ

沙紀

有り得る。あっさの魔法、ドリームキャスターでまず鬼軍曹を眠らせる。
後はゆっくりナイフを刺し込めば、血は飛ばない

麻日

ぅ…

沙紀

Q.E.D.、証明終了…

このみ

ブラボーっ！(拍手)

麻日

脱帽した！
さきちんの名推理に脱帽した！

このみ

あっさ…

麻日

えっ？あ、違う違うッ。誓って無実だよ

沙紀

私も、シロ…

麻＆沙

このみんは？

このみ

ブッブー

ト書き

間。

このみ

〈あたしが犯人じゃないことは、あたしが一番よく知ってる。
推理を聴くかぎり、あっさ、さきちん、二人ともに犯行は可能みたい〉

ネコ

ニャー

麻日

あっ、メカネコ…

ネコ

ニャーニャー

麻日

そっか。この子もずっと部屋にいたんだっけ？

このみ

ああッ！

麻日

どうしたの？急に

このみ

メカネコたん。監視カメラの機能あったよね、さきちん？

沙紀

うん…

このみ

その時の映像が録画されてるかも

ネコ

ニャー

麻日

このみん、やるぅー♪

このみ

てへへ

沙紀

では、壁にフィルムを映写する…

ト書き

映写機が回る。

このみ

上映スタートっ！
〈のちに語り継がれる、『放送部部長密室殺人事件』。
この事件の真相は一体…？全ては、メカネコのなく頃に明かされる。
解決編は、LIVEで！〉

皆

つづく

ネコ

ニャー

ト書き

からふるべりぃ学園、教室。
一学期最後のHR終了。
チャイム音声。

美緒

キーンコーンカーンコーン…

麻日

きりーつ…礼

麻こ沙

さようなら～

美緒

キーンコーンカーぁ、えほげほッ(咳)
…失礼しました

麻日

ぇえッ

このみ

放送事故？

美緒

カーンコーーン

このみ

あ、続けた

沙紀

はぁ…

ト書き

タイトルコール。

皆

からふるべりぃ ラジオドラマ 『She』

ト書き

放課後。
蝉がミンミン。
麻日と沙紀、下駄箱へ歩く。

麻日

明日からいよいよ夏休みかー。
(笑)楽しみだねっ？

沙紀

うん…

このみ

あっさ～、さきち～ん、二人とも待ってよぉ～！
…ッ、ふわわっ！

ト書き

このみ、こける。

このみ

いたーぃ(泣)

麻日

このみん、いい加減学習しよ。
毎年毎年荷物に押し潰されてるなんてさ

このみ

だ、だって…

沙紀

毎日少しずつ持ち帰れば済む問題…

麻日

もはや年中行事だよ？

このみ

ガーン！

沙紀

夏の風物詩…

このみ

ガガーン！
…そこまで言われたらあたし、俺の嫁になれない～！(泣)

麻日

はーい、二次元な事言ってないで立つ立つ

このみ

手貸して

麻日

ファイトー

ト書き

麻日、このみを起こす。

このみ

いっぱちゅぅ～☆

麻日

ッて、勢い次いでに抱きつかない＆キスも却下ッ

このみ

あったかぃ

麻日

私はあっつい

沙紀

公衆の面前で百合とは…

麻日

シャラップ！

このみ

でも確かに、熱くて溶けそぉ…へろ～ん

麻日

あっ。
(小声)ちょっとこのみん、

このみ

んー？

麻日

ブラ透けてる

このみ

ええっ！

麻日

汗でブラウスに張りついたのね

このみ

嘘嘘、えっえっー？

沙紀

何色？

麻日

ピンク

沙紀

そぅ。記念に…

このみ

へっ？ぁ、だ、だめっ、らめぇ～ッ！

ト書き

「パシャ」。沙紀、デジカメでこのみを撮影。

沙紀

〈間壁このみ。からふるべりぃ学園きっての巨乳。
粘土遊びが大好きなロリっ子で、粘土をこねて具現化も可能〉

麻日

ちょっ、何撮ってんの！

このみ

うぇ～ん(泣)

沙紀

何って…ピンク色の

麻日

だぁー！続きは結構ッ

このみ

さきちんがいじめるぅ～(泣)

麻日

泣かないで、大丈夫だから、ねっ？

このみ

ほんとぉ…？

麻日

本当よ

沙紀

後で焼き回しする？

麻日

追い討ちをかけるなーッ

このみ

うえ～～んっ！(号泣)

麻日

ああ、よしよし。
ごめんねー、そもそも私がピンクなんて言わなければ…

ト書き

「パシャ」。沙紀、デジカメで麻日を撮影。

沙紀

〈夢丘麻日。ポジション、ツッコミ。 その正体は、ブラの色を即答してしまう程、天然。 彼女の魔法については…、後ほど〉

麻日

気を取り直して。
さぁ、夏休みに海へ行きたい人ぉー！

このみ

海…？

麻日

この指止ぉーまれ！

このみ

はいはいはいっ、行く行く、絶対行くぅー☆
お砂でラピュタ作りたいの

麻日

天空の城をッ？

このみ

うんっ

麻日

頑張ってください。
さきちんは？勿論来るよね？

沙紀

……

麻日

…あの、足の指じゃなくて手の指に止まってくれるかな？

沙紀

はい…

麻日

よっし！
それじゃ、この三人で海行き決定ッ！

ト書き

一同、拍手。

このみ

楽しみだなぁ～。
海で写真いっぱい撮ろうね？

沙紀

うん…

麻日

ねぇ、そのカメラどこで買ったの？

沙紀

買ってない

麻日

え、でも…

沙紀

作った

麻日

自家製！？

沙紀

MADE IN 沙紀

このみ

さきちん器用だもんね

沙紀

光学ズームに手ブレ補正、さらには女性のシミ・そばかす・過去の男関係を完全に抹消できる優れ物

麻日

すごい…

沙紀

そぅ。すごいです…

ト書き

「パシャ」。沙紀、デジカメで自身を撮影。

沙紀

〈花村沙紀。つまり私は、通知表に「しっかり者で大人しい」とある。
メカいじりは一流のメカニックに匹敵し、どんなものでも作り出せる〉

このみ

あ、そだ。
二人とも水着持ってる？

麻日

私は新しいの買うつもり

沙紀

私も…

このみ

良かったぁ。じゃあ、今から一緒に水着見に行こうよっ

麻日

いいねー

沙紀

うん…

ト書き

チャイム音声。

美緒

ピンポンパンポーン…

麻日

あ、放送だ

美緒

諸君、司令部より報告があります。
夢丘麻日、間壁このみ、花村沙紀、以上の三名は直ちに通信室まで来るように。
ピンポンパンポーン

このみ

なんだろ…？

沙紀

さぁ…

麻日

司令部って何？

美緒

つべこべ言わずにさっさと来なさいッ！

このみ

キャッ

麻日

やだ、こっちの声聴こえてるの？

美緒

走れ！

このみ

怖いよぉ～

麻日

よくわかんないけど、とにかく通信室へ急ご

このみ

通信室って？

沙紀

放送室だと思う…

麻日

皆、走るよ

ト書き

放送室へダッシュ。

美緒

廊下を走るなーッ！

麻こ沙

どっちだよッ

ト書き

放送室に到着。
ドア開閉。

麻こ沙

失礼します…

美緒

遅かったわね

麻日

なんだ、誰かと思えばみぃさまじゃん。
緊張して損したー

このみ

みぃさま、ひさしぶり～♪

美緒

私語は慎めッ

このみ

へっ…怒ってる？

美緒

にこにこぷんよ

麻日

…笑いながら怒る人？

美緒

黙れ。先ずはそこに正座なさい

沙紀

はぁ…

ト書き

渋々正座する三人。

美緒

えー…ご存知の通り、私は皆さんの会話を盗聴しておりました

麻日

ぇえッ、いや全く存じ上げてませんが

美緒

(机を叩く)

このみ

ヒッ

美緒

なぜ…なぜ私も海へ誘わなかった！！

麻日

…はぃ？

美緒

私も遊びたいのよッ、皆と一緒に！
海で仲良く、キャッキャキャッキャしたいのよ！
キャッキャでキャキャッて、キャッキャりたいのよ！わかるでしょッ？

麻日

後半が全然わからない

美緒

酷ぃ！(泣)

麻日

いや、あのね、みぃさま

美緒

その名は捨てたわ。「司令」と呼んで

このみ

司令…？

美緒

はい、こちら司令です

麻日

…ぇっとね、みぃ…司令も後で誘おうと思ってたんだよ、本当だよっ

美緒

片腹痛いわぁー！

ト書き

美緒、ライフルで威嚇射撃。
「ズッパーン！」。

このみ

キャーーッ！

美緒

今の言い訳、20点

麻日

本当だってばッ

美緒

納得いく回答を要求するわ。
3分間待ってやる！

ト書き

「パシャ」。沙紀、デジカメで美緒を撮影。

沙紀

〈佐伯美緒。怒ると怖いセクシーコマンドー…もとい、放送委員長。
アーミー系武器マニアであり、魔法で武器を召喚できる〉

このみ

あっさ、どうしよ…？

麻日

殺意の波動に目覚めたからね

沙紀

簡単。素直に答えればいい。
貴方が来ると余計暑苦しい…

麻日

そんな事思ってないよ！
つか、さきちんブラック過ぎるって

沙紀

ブラック無糖…

美緒

時間だ、答えを聴こう！

麻日

こうなったら仕方ない。奥の手よッ

このみ

奥の手？

麻日

私の魔法でみぃさまを眠らせる

沙紀

…永遠に

麻日

ちがーーう！

ト書き

美緒、痺れを切らせ発砲。

このみ

キャーーーッ！

美緒

3つ数える内に答えなさい！
さもなくば、地獄を見る羽目になるわよ

麻日

地獄…

美緒

教室の中で黒板消しをパンパンするわ

沙紀

…しょぼ

美緒

ッ！
だったら、学園中の窓ガラス全てをピッカピカに磨くわ

麻日

な、なんてイイ人なの…

このみ

えらーい(拍手)

美緒

くぅ～…、黙らっしゃいッ！

ト書き

美緒、発砲。

美緒

数えるわよ。
はい、1つ…2つ…みぃ…

麻日

みぃさま、ごめんね。
ちょっとだけおねんねしてて

ト書き

麻日、ドリームキャスターを唱える。

沙紀

〈説明しよう。夢丘麻日の魔法・ドリームキャスターは、人々を夢の世界へと誘うのだ〉

美緒

ふわぁ～…(あくび)
あれ、急にどうしたんだろ私…

ト書き

ライフルを落とす美緒。

美緒

なんだかとても眠いんだ、パトラッシュ…。
嗚呼、全裸の金髪白人男性たちが、私の身体を抱いて天空へ…
ZZZ…ZZZ……(熟睡)

このみ

(笑)どんな夢見てるんだろね？

沙紀

世界名作劇場…

このみ

ありがと。あっさのおかげで、みぃさまもぐっすりと…

麻日

ZZZ…ZZZ……(熟睡)

このみ

あっさも寝ちゃってる！

沙紀

天然め…

このみ

ぶー、二人だけお昼寝なんてズルい。
あたしも一緒に寝てやるぅ～。
ZZZ…ZZZ……(熟睡)

沙紀

はぁ…、やれやれ…。
(微笑)いい寝顔…

ト書き

「パシャ」。沙紀、デジカメで三人を撮影。

沙紀

〈そして、7月20日海の日。私達4人は青い海へと出掛けた。
このお話の続きは…、LIVEで〉

ト書き

ノイズ音「ザーー…」(TVの砂嵐の様な)。
ノイズに紛れるジョルジュの声。

ジョル

〈振り向く彼女…三日月のように裂けた唇で…声は届かない…
その口の動きは…いつも見慣れた…
「ヴェ…キ…ル…ル」。
眼が合った僕らは、僕の記憶は…〉

ト書き

ノイズ高まる。雨音へシフト。
水溜りを疾走する足音。扉を開く音。
セントラルシティ、とあるレストラン。

マリー

いらっしゃいませ

ジョル

(息切れ)あの、予約したジョルジュだけど

マリー

お待ちかねですよ

ジョル

えっ？

マリー

フフッ(笑)

ジョル

何時頃来た？

マリー

10時50分です

ジョル

そう、几帳面に

マリー

ずーっと俯いたままでしたけどねぇ

ジョル

ありがと

ト書き

ジョルジュ、席へ。

ジョル

お待たせしてすみません、この嵐だから酷い渋滞で。
あっ、ジョルジュです。(笑)申し遅れました

エル

エルです…

ト書き

ジョルジュ、椅子に座る。

ジョル

お手紙の方拝見いたしました。それで、率直に。
とてもじゃないが信じられない。
その…例の事件の犯人だと？

エル

(頷く)

ジョル

〈俯いたまま、彼女はかすかに頷く〉
しかし、貴方は女性だ。幾らなんでも…

エル

……

ジョル

あっ、ちょっと君ッ

マリー

はい

ジョル

赤ワインを

マリー

銘柄は？

ジョル

ぇ…お任せで

マリー

それでは、年代モノをお持ち致します

ジョル

いや普通でいいよ

マリー

年代モノをお持ち致します

ジョル

安いのね！
(溜息)飲まなきゃ聴いてらんないや

エル

……

ジョル

それで、なぜまた手紙を？

エル

私だと気づいたからです

ジョル

気づいていなかった？

エル

はい

ジョル

人を殺めておいて？

エル

はぃ

ジョル

はい、か…。
〈透き通る氷みたく、穢れを知らずに育った印象を受ける。
齢21といった所か、実にあどけない。
こちらの予想と遥かに異なる、華奢な体つき〉

エル

手錠をかけてください

ジョル

え…ま、待ってよ！

エル

お願いします

ジョル

貴方を拘束などしない、そんな趣味も無い

エル

いつまた現れるか…わからないの

ジョル

僕は、手紙の真偽を確かめに来ただけだ。
で、結論から言って、貴方は犯人じゃないと思うし

エル

私です！

ジョル

悪い夢でも見たんでしょ？
こう陰惨な事件が続けば、誰だって変な夢の1つや2つ。
勿論僕も例外じゃない。
昨日なんてね、玉ねぎに追いかけられる夢を…

エル

(泣)

ジョル

ッて、勘弁してくれ

マリー

別れ話のもつれ、失礼します

ト書き

マリー、グラスに赤ワインをそそぐ。

マリー

フフッ(笑)

ト書き

マリー、去る。

ジョル

なんて夜だ。(飲酒)
貴方もいかがです？

エル

…！

ト書き

心臓の拍動「ドクン」。
加工されたエルの声。

エル

〈赤い、その赤い、赤い血、血を…頂戴〉
ごめんなさい

ジョル

何が？
えっ、どこ行くんですか？ちょっと！

ト書き

お手洗いへ駆け込むエル。
ジョルジュ、後を追う。

マリー

お客様

ジョル

どいてくれ

マリー

女性用でございます

ジョル

邪魔だ、どけ！

マリー

男は引き際が肝心です！

ジョル

違うッ、そういうんじゃなくて、

ト書き

鏡の破裂音。

ジョル

エルさん！

ト書き

ジョルジュ、マリーを押し退け中へ。
鏡の破片を踏む。

ジョル

〈床一面に広がった鏡の破片。僕をバラバラに映しだす。
座標軸は揺らぎ、居場所が定まらない〉
大丈夫ですか？
〈抱きかかえた女性は…彼女と別人〉
君、ボケっとしてないで頼む

マリー

は、はい。
こちらへ

ト書き

マリー、女性を支えその場を去る。
ジョルジュ、銃を手に。

ジョル

(深呼吸)

ト書き

破片の上を歩く。
個室の扉を蹴り飛ばす。
銃を構える。…誰もいない。
破片の上を歩く。
個室の扉を蹴り飛ばす。
銃を構える。…誰もいない。
破片の上を歩く。
個室の扉を蹴り飛ばす。
銃を構える。

ジョル

居ない？
〈鏡の国へ迷い込んだのか。
彼女は、この世界から消えた〉

マリー

キャーーー！

ジョル

何だ今度は

ト書き

ジョルジュ、フロアへ戻る。

ジョル

どうしたッ？うっ…
〈それが、僕の最後の言葉となった〉

ト書き

雨脚が強くなる。

ジョル

〈悲鳴の主が倒れている、青白く美しい死体で。
見慣れた光景にも関わらず、自然と嗚咽が込み上げてくる。
たぶん血液は残っていない〉

ト書き

雨音高まる。ノイズへシフト。

ジョル

〈椅子に腰掛けた女性。エルさんではない誰か。
こちらを振り向く彼女。艶やかになびく金髪。
三日月のように裂けた唇で、囁きかける。
しかし雨の所為だろう、その声は届かない。
けれど、その口の動きは、署内でいつも見慣れた…〉

エル

ヴェロッキオ・フェルメール・デル

ト書き

心臓の拍動「ドクン」。

ジョル

〈眼が合った僕らは、僕の記憶は…入れ代わる〉

ト書き

ノイズに紛れるジョルジュではない声。

？

待たせた

ジョル

〈悪い夢でも見たんでしょ？〉

？

この体は自我が強くて困る

ジョル

〈勿論僕も、例外じゃない〉

？

同じ人種に会えて光栄だ

ト書き

ノイズ途切れる「プシュン」(TV消す様な)。

ジョル

〈僕の悪夢は、未だ醒めない〉