雁初

――ぇ？

寺陀

僕ね、幽霊が視えるんだ。第六感ッてヤツ

雁初

…はぁッ！？

寺陀

ぁ、信じてない

雁初

ったりめーだろ

寺陀

カリ君なら信じてくれると思ったのに

雁初

霊なんてフィクション極まりないモン、誰が信じるかっつの

寺陀

(囁き)ホントだよ…

雁初

どぅわッ！囁くな囁くなッ

寺陀

じゃあどうしたら信じてくれるんさー？

雁初

証拠を出せ

寺陀

証拠？

雁初

ああ

寺陀

例えば、カリ君の背中に居る血だらけの女の子とか？

雁初

キャイン！
どこどこどこ？ウソマジガチでかッ？

少女

あはは…

寺陀

(笑)もう離れたよ

雁初

……

寺陀

信じますか？

雁初

いいやッ、まだだだ！

寺陀

ひょっとして、怖い？

雁初

バッカなー！(裏声)
オバケなんて無いさ、オバケなんて嘘さ！
いっそテラ、お前が死んで化けて出て来ようものなら、信じよう

寺陀

なぜ僕が死ななきゃ…

雁初

死ね！

寺陀

いやいや

雁初

死ね、死ね！

寺陀

(笑)無茶言わない

雁初

死ね、死ね、死ね！

寺陀

カリ君、皆見てるからさ。ちょっ…

雁初

死ね、死ね、死ね、死ね！

寺陀

静かに…

雁初

死ねぇッ！！

ト書き

寺陀、雁初をぶん殴る。

寺陀

〈一月、廊下、昼休み。
僕は世界で一人だけの友達を、殴った〉

雁初

ぃって…

寺陀

〈腫れ上がった頬に手を添え、
カリ君は目尻に浮かぶソレを、落涙〉

ト書き

涙弾ける。
雁初、踵を返して。

寺陀

待って！

雁初

絶交だ！この先一生、口も利いてやんねぇ。
大っ嫌いだ！バーカバーカ

ト書き

去る雁初。

寺陀

……。
〈ＩＱ80未満の捨てゼリフを、その時の僕はまだ、甘々に見ていた〉

ト書き

翌日。

寺陀

〈次の日〉

クラス

さようなら

寺陀

〈次の次の日〉

クラス

さようなら

寺陀

〈次の次の次の日〉

クラス

さようなら

寺陀

〈次の次の次の次の日〉

クラス

さようなら

寺陀

〈次の次の次の次の次の日〉

クラス

――

寺陀

…ぁ。
〈学校はお休みだった、テヘっ。
あれから一ヶ月。
僕らの溝は埋まらぬままに、一層深く隔たった。
時折、視線が交わるも気まずい緊張感。
刹那、すれ違い赤の他人と化す。
そう――僕らは口下手だったのだ〉

ト書き

寺陀家。
自室の襖、開く。

寺陀

〈布団へダイブ〉
(溜息)フゥー…。
ゴメンナサィ…。
〈なんて寒い陳謝、小指を詰めても拒否る。言えば終わりだから。
でも、そしたら、一体、どうしたら…モヤモヤ。
微分積分より難しい〉

ト書き

ケータイ、着信。

寺陀

…っ！

ト書き

受話。

寺陀

ももししッ

雁初

俺

寺陀

うん。知ってる

雁初

…少し、会って話そうぜ

寺陀

うん。わかったぜ

ト書き

寺陀、チャリを漕ぐ。
ブレーキ。駐輪。
コンビニ前。

寺陀

〈二月、コンビニ、夜分遅く。
僕は絶交中の友達を、待った〉

ト書き

車の交通。

寺陀

(吐息)はぁぁ…。
ぅー、サブッ。
〈淡雪。
ふわっと溶けて、サドルは雪の結晶を乗せている。
とても綺麗な白い夜〉

ト書き

救急車のサイレン、通過。

寺陀

…(鼻すする)
〈結局、カリ君は現れなかった。
午前零時。魔法が解けたみたいに、雪は止んだ――〉

ト書き

翌日。

寺陀

〈次の日〉
……。
〈不自然にも、カリ君の机の上には、一輪の菊が生けられてあった〉

先生

かくがくしかじか

寺陀

〈担任曰く、昨夜スリップしたバイクに撥ねられ死去。
通夜は今晩執り行われるそうだ〉
……

ト書き

起立。

寺陀

先生ッ！あの…なんだか僕、フラついてダルくて、熱っぽくて40℃越えてて、
頭ガンガン咳もエッホゲホ、すっっごく気分が悪くってッ、瀕死の状態です。
だからこのまま授業を受けたら、僕は…一生後悔します。死ねます。なので、帰ります！

ト書き

教室出て、走る。

寺陀

〈と、僕は元気に早退した。
事故現場へ、友達の元へ向けて…〉
ごめんなさいッ、ごめんなさいッ、ごめんなさいッ、ごめんなさいッ、ごめんなさいッ。
〈そう言い続けたのに…、第一声〉

ト書き

事故現場。
雁初が視える。

寺陀

はぁ、はぁ、はぁ…はぁ…

雁初

……

寺陀

死んだ？

雁初

…死んだ

寺陀

死んだ

雁初

死んだ

寺陀

死んだ(笑)

雁初

(笑)死んだ！

寺陀

(爆笑)

雁初

(爆笑)

ト書き

暫く腹抱えて笑う。

寺陀

…成仏してなくて良かった

雁初

やり残した事があるからな

寺陀

セックス？

雁初

ぁ…、それもあるな

寺陀

(笑)

雁初

けど、それよりもホットな話題だ

寺陀

教えて

雁初

いや、もう済んだ。
こうしてお前と笑えて、未練はなくなったよ

寺陀

…そっか

雁初

ぅん…。
つーか、お前ガチで幽霊視えるのな？

寺陀

言ったじゃん

雁初

ああ、…だな

寺陀

だよ

ト書き

余白。

雁初

…そろそろ逝くわ

寺陀

どっち？

雁初

知らね。閻魔さん次第だろ

寺陀

試しにさ、ハムの詰め合わせでも持って行けば？

雁初

バーカ。賄賂で即地獄逝きだっつの

寺陀

(笑)

雁初

(笑)
…じゃな

寺陀

また明日

雁初

……

寺陀

敢えて。また明日

雁初

…おぅッ、また明日！

ト書き

雁初、昇天。

寺陀

……。
〈湯気は遠くへ掠れ行き、そして、僕の傍には誰も居ない。
嗚呼…ダメ、泣いちゃいそぅ――(涙)〉

ト書き

翌日。

クラス

さようなら

寺陀

〈さようならを伝える相手さえ、ココにはもう居ないんだ…〉

ト書き

一ヶ月後。
目覚ましのベル。
停止。

寺陀

ふあー…

雁初

んぅ～…テラ、何時？

寺陀

7時

雁初

よしッ、まだ寝れんな

寺陀

そうはいかないよ

雁初

はぁ？休みだろが

寺陀

今日は卒業式です

雁初

あっそ

寺陀

あっそッてね、カリ君もでしょ？

雁初

俺死んでるし

寺陀

ま、それはそうかもしれないけ、ドォオオーーッ！！

雁初

んだよ、うっせーな

寺陀

なな何で？何で何で何でんかんでん？何でッ？

雁初

ドッキリ

寺陀

ドッキリ…ッて、へぇッ？

雁初

あー要するにだ、
俺は本日付けでお前さんの守護霊になったと

寺陀

はいぃッ！？

雁初

以上、おやすみー

寺陀

…マジで？

ト書き

エンドロール。
その後。

寺陀

〈三月、校門前、お日柄も良く。
僕は高校を、卒業した〉

雁初

ぅ…ぅっ…

寺陀

ほら、カリ君。スマイルスマイル

雁初

ヘ…ヘヘヘ

寺陀

怖っ

雁初

ぅおいッ！てんめー、怖いとかほざくんじゃねぇよッ

ト書き

シャッター音。

雁初

な…

寺陀

はい、OKでーす

雁初

何がOKじゃぁあーッ！

寺陀

ギャァアー！

雁初

待て、オラぁーー！

寺陀

ヒィーッ、お助けー！

雁初

殺ーす！

寺陀

守護霊に殺されるぅー！
〈名付けるならば、そう――差し詰め、
卒業心霊写真とでも言ったところだろう。
(笑)w〉

少女

捕まえたぁ

寺陀

WOWッ！
見つかっちゃ…、た

少女

迎えに来たよ

寺陀

君…、確か――

ト書き

プレイバック。

寺陀

例えば、カリ君の背中に居る血だらけの女の子とか？

雁初

キャイン！
どこどこどこ？ウソマジガチでかッ？

少女

あはは…

ト書き

終了。

寺陀

――あの時の

少女

今度はおにいちゃんの番。
(笑)こっちに来て、一緒に遊ぼ

雁初

テラぁああーーッ！

寺陀

カリくん…

雁初

避けろォオッ！！

寺陀

ぇっ…

ト書き

左から、クラクションが鳴り響く。

ト書き

タイピング音。

作者

Trancer。
作、KKKKK

ト書き

ENTER。

作者

……

ト書き

静かな雨。
玄関の扉、開く。

畝

行って来ます…

ト書き

玄関の扉、閉まる。
傘を差す。

畝

〈3年ぶりの「行って来ます」は、私なりのケジメだ〉

ト書き

歩く畝。
忙しない街の喧騒。

畝

〈生きてる実感が無い。
その癖、生き苦しさを露骨なまでに痛感してしまう。
手首に刻まれた硬い皮膚の断層を擦りながら、私は痛みで私を再認する。
だからいっそ――〉

ト書き

改札を切符が滑る。
駅、白線の内側。
快速電車が近づいてくる。

畝

〈あと四歩…あと三歩…あと二歩…あと一歩…あと一歩…あと一歩！〉

ト書き

電車、通過。

畝

(荒い呼吸)

ト書き

畝、自販機を蹴り飛ばす。

畝

っ…！

ト書き

引きずった足取りでベンチへと戻る。
呼吸整えて。

畝

〈ベンチに独り取り残された身体は、きっと足元の空缶と同じ構成なのだろう。
冷えて硬く、誰もゴミ箱に捨ててくれない。
深海のように静まり返った白線の内側で、白い吐息だけが夜風にさらわれた〉

鑑音

こんばんは

畝

…！

鑑音

隣良いかな？

ト書き

鑑音、畝の隣に腰掛ける。

鑑音

(一呼吸)

畝

……

鑑音

終電とっくに行ったけど、良いの？

ト書き

鑑音、煙草に点火。

鑑音

フゥー…

畝

……

鑑音

あっ、失敬

ト書き

一服し、靴裏で擦り潰す。

畝

誰ですか、貴方

鑑音

鑑音

畝

え…

鑑音

名前だよ。変わってるでしょ？

畝

…別に

鑑音

君は？

畝

……

鑑音

じゃあ、田中花子ね

畝

明日暈

鑑音

そう。明日暈ちゃんッて言うんだ

畝

ちゃん付けしないで

鑑音

なら、

ト書き

鑑音、ベンチから起立。

鑑音

明日暈

畝

っ…

鑑音

どの道もう電車は来ない。
始発までさ、一緒に潰さないかい？

畝

……

ト書き

畝、立ち上がる。

畝

〈名前以上の詮索はしない。
どうせ朝までの関係だと、互いに悟っていたから〉

ト書き

僅かな交通量。
駅前の一本道を行く二人。

畝

〈雨の爪痕が、無数の透明な水溜りを生み落とす。
水面に溺れた私の映像は、〉

ト書き

バシャッと水が弾く。

畝

〈波紋によって分解された〉

鑑音

おーいッ

畝

っ…！

鑑音

こっち

ト書き

二人、螺旋階段を上る。
ビル風が耳に障る。

鑑音

はぁ…思ったよりしんどいな

畝

……

鑑音

どうですか、この眺め？

ト書き

畝、絶句。

畝

〈壮観だった。
その展望は、ふやけたビルと滲んだ灯りで出来ていた。
星ひとつ無いにも関わらず、〉
なんて…

鑑音

綺麗だよね

畝

……
〈胸の片隅に沈殿する錆…それも遠くから望めば、ただのピクセルに過ぎないのかもしれない。
そうか――。私のもやもやは、余りにちっぽけだ〉

ト書き

鑑音、柵に乗り上げる。

鑑音

ドールハウスみたいでしょ？
あのひとつひとつの光にさ、一人一人の暮らしがあるなんて。
実に嘘臭い

畝

…かもね

鑑音

明日暈

畝

何

ト書き

フラッシュ。鑑音、携帯カメラで畝を撮影。

畝

うっ…

鑑音

背中、押してやろうか？

畝

ぇ…

ト書き

刹那。

鑑音

あと一歩だったんだろ、さっきの

畝

……

鑑音

さぁ、おいで

畝

……

鑑音

……

畝

…遠慮しとく

鑑音

良いのかい？

畝

……
〈私は答えなかった。応えられなかった。でも、それが私の答え。
擦り切れたシナプスは、もう何も伝達しない〉

鑑音

そぅ。
じゃ、お先に失礼するね

ト書き

背を向ける鑑音。

畝

ちょっ…

ト書き

鑑音、自らを撮影。
後ろ手に携帯を畝へと放る。

鑑音

それさ、悪いけど遺影にでも使ってよ

畝

鑑音ッ！！

鑑音

バイバイ

ト書き

鑑音、最後の一歩を踏み出す。
落下。

畝

〈咄嗟に、次の音を察して、耳を塞いだ〉

ト書き

無音――。
次第に雨がパラつく…。

畝

……

ト書き

駅へ向かう畝。
肉片をつばむ烏。

畝

〈もはや、生き苦しさも超えた。
嗚呼…なんてトランス〉

ト書き

ベンチに座る。

畝

〈せめてもの償いに、私は始発を待った〉
ぁっ…

ト書き

畝、空缶を拾う。

畝

ゴミはゴミ箱へ。
〈空っぽのまま日常へ、明日暈畝を捨てるように、そっと…〉

ト書き

カランッと乾いた音。

畝

……

ト書き

電車、ゆっくりと停止。

畝

(鼻で笑う)
〈とうとう私は、人の死を冷たく笑った〉

ト書き

踵を返す畝。
時雨の中、家路へ歩き出す。

畝

〈うざい雨も、今朝は特別優しかった。
涸れた心を潤すように、涙腺は雫を吸い上げていく〉

ト書き

畝、止まる。

畝

〈…そして、私は空を睨んだ。
こんなシナリオを演じさせたお前を、必ずぶっ殺すと、固く誓って――〉

ト書き

タイピング音。

作者

必ずぶっ殺すと、固く誓って――

ト書き

ENTER。

作者

ふぅー…、出来た

ト書き

作者、身体を伸ばし呻く。
珈琲すする。

作者

冷たっ

ト書き

新しい珈琲を淹れる。
玄関チャイム。

作者

…はーいッ

ト書き

玄関に向かう作者。
タイピング音。

畝

ト書き。
畝、帰宅。玄関の扉、開く

ト書き

扉、開く。

作者

はい

畝

ずぶ濡れの畝。手に、ナイフ

作者

あの…

畝

SE。
心臓を貫く音

ト書き

心臓を貫く音。
吐血。出血。

作者

（断末魔）

畝

どけ

ト書き

作者、絶命。

畝

……

ト書き

畝、椅子へ。
液晶を凝視。

畝

…さよなら、私

ト書き

キーボードを引き寄せる。

畝

ト書き。
backspace――

ト書き

backspaceを押す。
ここまでの物語、逆再生…。ふりだしに戻る。
タイピング音。

作者

Trancer。
作、KKKKK

ト書き

ENTER。

ト書き

社員食堂。
豆と風呼が、ランチを両手にテーブルへ歩いてくる。

豆

ヘ…ヘ…ヘックシュン！

風呼

あっ

豆

くぅ～、鼻ぐじゅぐじゅ

風呼

ねぇ

豆

はい？

風呼

私のお味噌汁に、豆ちゃんのお汁が入った

豆

ええッ！す、すいません。あぁどうしよ…あたしの味噌汁と交換しますか？

風呼

ううん、平気

豆

でも、

風呼

豆ちゃんのお味噌汁の方が、被害大きいし

豆

…ですね

風呼

それよりも、お昼休みだといって気を抜かない事。
くしゃみは両手で口を覆う

豆

両手塞がってて

風呼

秘書はいつでも…

豆＆風

八方美人です

風呼

そう。心がけて

豆

はい！ハックション！

風呼

…私のハムカツに、豆ちゃんのお汁が、お汁が、お尻が、

豆

風呼さん、お気を確かにッ。ええっと、ただちに代わりを用意してきます！

ト書き

豆、カウンターへ超特急。
が、誰かと衝突、倒れる。

豆

キャッ！…イタタタタ、ちょっとどこに目つけて

蹄

ごめん

豆

ひ、蹄様…じゃなかった、蹄さん

蹄

怪我ない？

豆

は、はいッ

蹄

ストッキング破けちゃったな

豆

えっ、あっ…

蹄

ごめんね

豆

全然、とんでもございません！
この位ツバつけとけば直りますから(笑)

蹄

すごいストッキングだね

豆

むしろコッチがタックルかまして、その、申し訳な気持ちで

蹄

いいさ

豆

すいませんでした。慰謝料ふんだくって構いませんので

蹄

(笑)ん～…じゃあ、今夜飯行かない？

豆

えっ

蹄

豆さんのおごり

豆

マジッスか！？

蹄

嫌かい？

豆

め、滅相もございません

蹄

決まりだね。…あれなら、風呼さん連れて来てもいいから

豆

いいえ、邪魔者はいりません

蹄

そぅ。じゃあ後で

豆

はい！お世話になります！
…名前、覚えてくれてたんだぁ

ト書き

蹄、遠のく。
豆、手ぶらで元のテーブルへ戻る。

風呼

おかえり

豆

ただいまで～す

風呼

…ちょっと、私のランチは？新しいの持って来てくれるんじゃなかった？

豆

さぁ

風呼

さぁッて。あのね、

豆

風呼さん

風呼

何よ？

豆

恋ッて、何でしょうか？

風呼

豆ちゃん。順を追って考えましょう。
まずは私のランチの今後について、考えましょう

豆

はっ！(stand up)

風呼

何？急に立ち上がって、

豆

(手を振る)

風呼

手を振って、

豆

ホラッ、あっちに蹄様が居ますよ！お～い！

風呼

蹄くん…そういう事

豆

やっほぉ～！

風呼

山じゃないんだから

豆

双眼鏡無いかしら？

風呼

山じゃないんだから

豆

ギャハ！蹄様と目が合っちゃいました

風呼

(溜息)…良かったわね。
ひょっとして、好きなの？

豆

ここだけの話ですよ

蹄

ヘックション！

ト書き

離れたテーブル、蹄のくしゃみ。

豆

あっ、決定的瞬間！蹄様のくしゃみです風呼さん

風呼

私たちがウワサしてるからじゃない？

豆

ウワサ？

風呼

よく言うでしょう、くしゃみすると誰かが自分のウワサをしてるッて

豆

へぇ～

風呼

常識よ

豆

…蹄様の朝食は、パンである

蹄

ヘックション！

豆

おおぉ

風呼

(笑)偶然ッて怖いわね

豆

蹄様は、ゆでたまごに塩をかける

蹄

……

豆

マヨネーズ

蹄

ヘックション！

豆

おおぉ

風呼

いい加減にしなさい。それより、私のランチ持って来て頂戴

豆

現在、蹄様に彼女は居ない

蹄

ヘックション！

豆

おおおー！

風呼

えっ

豆

次の質問次の質問…

風呼

待って！
蹄くんは、ブリーフ派である

蹄

ヘックション！

豆

風呼さん、勝手に質問しないで下さいよ

風呼

当たってる…

豆

よ～し！現在、蹄様に好きな人は居る

蹄

ヘックション！

豆

ズバリ、社内の人間だ

風呼

……

蹄

ヘックション！

豆

キターッ！いいぞ、もっと核心に迫りますよ。
ズバリ、ズバリその人は、秘書課の人間だ！

風呼

……

蹄

ヘックション！

豆

…ま、間違いない。あたしの事だ。
前略母上様、遅ればせながら、豆にも春がやって参りました

風呼

豆ちゃん

豆

風呼さん。お先に、寿退社させて頂きます

風呼

豆ちゃん！

豆

はい？

風呼

聴いて。水差す様で悪いけど、蹄くんは、そんなカッコイイ男じゃない

豆

(笑)何を根拠に。
ご冗談は止して下さい

風呼

蹄くんは、私服がダサイ

蹄

ヘックション！

豆

えっ

風呼

Ｔシャツの裾はパンツの中に入れる

蹄

ヘックション！

豆

えっ！

風呼

帽子は常にサンバイザー

蹄

ヘックション！

豆

ええっ！

風呼

服はすべて母親チョイス

蹄

ヘックション！

豆

ゲゲゲッ

風呼

「ママ」と呼ぶ

蹄

ヘックション！

豆

嘘ぉ～！

風呼

ズバリ、マザコン！

蹄

ヘックション！

豆

NOぉーー！

ト書き

豆、涙のノックアウト。

豆

そんな…蹄様が、マ、マザ、マザコ、マザコン…(泣)

風呼

ご愁傷様

豆

燃えたよ。燃え尽きた、真っ白にな

風呼

夕食のお誘い、断っておきなさい

豆

(泣)…そうします

風呼

打たれ弱いわね、全く。
しょうがない、今夜は一緒においしいもの食べましょ！

豆

風呼さん

風呼

豆ちゃんのおごりで、ね？

豆

え～！

風呼

「え～」じゃない。お昼抜きになったのは誰の所為？
食べ物の恨みは怖いのよ。しかと胸に刻んでおきなさい

豆

は～ぃ

風呼

歯切れ良く

豆

はい！

風呼

秘書はいつでも…

豆＆風

八方美人です

豆

(笑)

風呼

…さて、戻りましょうか。仕事よ

豆

はい！

ト書き

社員食堂を後にする風呼と豆。

豆

あの…

風呼

なに？

豆

風呼さんッて、もしかして、蹄様の元・カノですか？

風呼

違うわ。ただの同期。何で？

豆

いえ…すみません

風呼

豆ちゃん、

豆

はい？

風呼

メイク直して来なさい

豆

えっ？

風呼

崩れてる

豆

あちゃ～、黒い涙が…。失礼します

ト書き

豆、トイレへ小走り。

風呼

ヘックシュン！
…あぶなかった。(溜息)
蹄くん、まだ私の事……まさかね

隈田

え…っと、ココの筈だけど。睡眠ing school『ノンレム』、合ってるな

学長

Excuse me

隈田

え？

学長

Do you speak English？

隈田

あ、NO NO NO。僕、英語全くしゃべれな～い

学長

Really？

隈田

リ、リアリ

学長

俺も！

隈田

へ？

学長

俺もしゃべれないんだよね！気が合うなぁ(笑)

隈田

(苦笑)

学長

君だろ、隈田くんッて若造は？

隈田

わか…あ、ですけど

学長

今日一日よろしくね！

隈田

あ、じゃあまさか貴方が

学長

夜なのに眠れない、そんな若造かかってこい！
正しい睡眠教えます、睡眠ing school『ノンレム』学長とは、俺の事だ！

隈田

ぐわっ、まぶしい…上下真っ赤な衣装でコーディネイトされている…

学長

目にくるだろ？

隈田

目が～

学長

さ～て～、早速だが隈田くん、

隈田

はい

学長

ぐっすり寝たいかー！！？

隈田

えっ？

学長

ほら、一緒にやって

隈田

ぁ…

学長

ぐっすり寝たいかー！！？

隈田

お、おぅー！

学長

じゃあ惜しみなく、リクエストにお応え致しましょう！
ラジオネーム、「隈田の母ちゃん深爪」さんから頂きました。ありがとう

隈田

誰？

学長

曲は学長で、『この5円玉を見つめて』。
5円が、右、そして左、oh right♪また右、そして左さ、oh right♪…

隈田

催眠術？

学長

両目で追って1・2・3♪
ここで問題ジャジャジャーン♪

隈田

突然？

学長

この5円玉は、昭和何年でしょうか？

隈田

ええ？

学長

Thinking time！

隈田

ま、待ってください。これ何の効果があるんですか？

学長

俺の速さについて来れるか若造！

隈田

が、学長？

学長

遠心力ッて素晴らしい～♪

隈田

この人変だ、絶対変態だ

学長

Time up！ではお聞きしましょう

隈田

速過ぎて見えませんって

学長

昭和何年ですか？

隈田

え…昭和は64年までだから…48年

学長

ブッブー！

隈田

でしょうね

学長

正解は、昭和70年

隈田

ありませんよ！

学長

隈田くんには残念賞としまして、ポケットティッシュを差し上げますので、
駅前で配ってる人から貰ってください

隈田

学長！

学長

何だい？

隈田

僕は慢性的な睡眠不足改善の為に来たんです。
ちゃんとした睡眠法を教えてくださいよ

学長

催眠術は利かないか。
じゃあ、羊を数えてみよう！せーの、羊が1匹、羊が

隈田

ストップ！いやいや、羊位毎日数えてますし、効果ゼロです

学長

じゃあ、絵本でも読んであげよう。『桃太郎』。昔々ある所に

隈田

ストップ！いやいや、絵本？僕25ですよ、今更

学長

だったら、じゃあ…『羊太郎』！

隈田

羊太郎！？

学長

昔々ある所におじいさんとおばあさんが居ました。
おじいさんは山へピーー、おばあさんは川でピーーしていました

隈田

何ですか、ピーッて？

学長

芝刈りと洗濯(小声)

隈田

ふせる必要ないでしょ

学長

おばあさんが川でピーーしていると、

隈田

だから、

学長

川上の方から大きな羊が流れてきました

隈田

うあ～、やっぱり

学長

おばあさんはその羊を…無視しました

隈田

羊流されたー！！

学長

メェ～！

隈田

どうして？羊拾わなきゃ始まらないでしょうが？

学長

すると、川下から羊が泳いできました

隈田

ナイスファイト羊！

学長

川の流れに逆らって、羊はおばあさんを捕まえました

隈田

えええ？

学長

「クソばばあ、俺様をシカトするとはいい度胸だ。貴様なんぞ一口で食ってくれるわ！」
恐ろしい羊です

隈田

おばあさんピンチじゃん！

学長

しかし、日本語じゃないので、おばあさんにはサッパリです

隈田

無駄な描写…

学長

「あんれま、大きい羊だこと。どれ、ウチに持ち帰って割ってみるべ」

隈田

割っちゃダメ！割ったって何も出ないよ絶対。
あわわわわ、このままじゃ羊の運命が…

学長

…つづく

隈田

続いちゃった！嘘、すごい気になるんですけど

学長

眠くなったかい？

隈田

いえ、むしろギンギンです。
続きが気になって気になってしょうがない

学長

それじゃあ困るな。
そうか、精神的誘惑より、肉体的誘惑の方が眠れるかもしれない

隈田

何ですか、肉体的誘惑ッて？

学長

右手で鼻をつまんでごらん

隈田

え？…こうですか？

学長

そしたら空いた左手で、今度は口を覆う

隈田

覆いました

学長

うん。したらね、その状態で暫くキープ

隈田

……

学長

……

隈田

……

学長

たぶん、息が出来なくて苦しいと思うけど、それでOK。
ほら、目を瞑ってみよう。三途の川が見えてくるだろ？
おばあさんが手を振ってるね。さぁ、手のなる方へ in the sky！

隈田

殺す気か！！

学長

永遠の眠り

隈田

ふざけんな！

学長

大丈夫大丈夫、目覚めたくなったら、おじ様がキスしてあげる

隈田

王子様でしょ！何でおじ様なの？

学長

自転車屋のおじさん

隈田

知りません、そんな人！

学長

だったら、究極の睡眠法だ！

隈田

究極の？

学長

その場でジッとしてて、動いちゃ駄目だ、いいね？

隈田

はぃ

学長

よし、準備は整った。
スナイパーさん、お願いします！

隈田

え？バカバカバカ、暗殺か！？
…ぅぐ！(倒れる)

学長

暗殺…。
いいえ、ただの麻酔銃ですよ、隈田さん